PEOPLE WHO WEAR A LAB COAT 白衣を身に纏ったプロフェッショナル達のストーリー

Story

りんくう総合医療センター 産婦人科部長

荻田 和秀

どんなに状態が深刻でも、

笑顔で向き合いたい

今回ご場いただく荻田和秀医師は、過去25年間で1000件以上に及ぶハイリスク出産を手がけたりんくう総合医療センター産婦人科部長。ドラマ化された人気マンガ『コウノドリ』(講談社)の主人公のモデルでもある荻田先生に、お話を伺います。

荻田先生が医師として持ち続けている“こだわり”を教えていただけますか?

まず、お産は病気ではないということ。だから、来院するのは患者ではありません。そこで大切なのは、何よりも第一印象です。

産科の医師というのは、人生でそう何度も相対する存在ではないですよね。妊娠してから出産をするまでは、できるだけお母さんに安心してもらいたい。そのために、ニコニコと笑顔で診察するなど、気をつけています。

確かに他の診療科では、例えば深刻な病状の相手に笑顔を向けることがしづらい場合もあるかもしれません。

そうですね、一般的に言われるような医師と患者の関係ではありません。でも、僕はどんなに状態が深刻でも、笑顔で向き合いたいと思っています。笑ってあげないとしょうがない。

それは、どうしてですか?

もし万が一、赤ちゃんが亡くなって出てきたとしても、出産という行為がなされたということは「おめでとう」でいいはずなんですよ。そうしないと、そのお産は苦痛でしかなくなってしまうじゃないですか。だから、いつでもお母さんには笑って声をかける。そう心がけています。

産科医師としての荻田先生の覚悟に圧倒されました。人が生を受ける場面に立ち会い続けることに、精神的なプレッシャーなどはありませんか?

結果的にとても重たい仕事ではあるのですが、現場でプレッシャーを感じることはあまりありませんね。ドキドキしたりヒヤヒヤしたりは、どの科でも一緒なので。

ただ、お産にはそれを超える感動がある。たとえ他人のお子さんでも、生まれてくる姿を見るととても感動するんですよ。その過程が辛いものであっても、その瞬間にすべてが吹き飛んでしまう。だから、プレッシャーに打ちのめされるようなことはありません。

では、「もう辞めたい」と思うようなことも、あまり……?

いや、1日に2~3回は辞めたいと思っていますね(笑)。

あ、あるんですね(笑)。なんだか、安心しました。

そりゃあ、「もうやってられへん」と思うことはありますよ。でも、1日に2~3回は辞めたいと思っても、4~5回は楽しいと思ってしまうんですね。「今日が何とか終わったなぁ」というときに、1日をサブトータルして、楽しい方が上回ると、まあいいかと思って、また翌日もがんばるわけです。

そうやって、今度は1カ月をサブトータルして「まあいいか」と思って、1年間をサブトータルして「また来年もやるか」と思って、その繰り返しでもう20年以上になります。

では、キャリアプランを綿密に設計していたわけではないのですね。

はい、そうですね。毎日を積み重ねていった結果、今があるということです。

産婦人科医をしているのは、なぜですか?

「めでたいから」が一番ですね。その点に関しては、やっぱり他の科とは違う要素があります。他にも、内科系・外科系を両方できる、リプロダクションなどの研究もできるなど、医師としての選択肢の幅や広さも理由です。

荻田先生は、産婦人科医の現場を描いた人気マンガ『コウノドリ』の主人公のモデルだとお聞きしました。これはどのような経緯ですか?

『コウノドリ』は僕が担当した患者さんの旦那さんが描いたマンガなんです。当院にも追加取材に来たり、症例の幾つかは僕が体験したものだったりします。

非常におもしろいマンガで、「これで産婦人科医のなり手が増えるのでは」と感じました。

そうなるとうれしいですね(笑)。実際、そのような声を耳にすることもあります。

産婦人科医志望の学生や医師にアドバイスはありますか?

これは僕が駆け出しのとき恩師に言われたことなのですが、患部を治療する手術も患者をリラックスさせる話術も、人とのコミュニケーションすべてをまとめて「施術」である、と。特に産婦人科は、「施術」の重要度が高い診療科だと思います。総合力が求められるのは間違いありません。

僕たちは占いの水晶玉を持って仕事をしているわけじゃない。先のことって読めないんですよ。だから、野球の試合なら一回の表で代打まで出して、完勝するくらいじゃないといけません。今できる限りのことをする。その際にはエビデンスベースで、しっかりと医学的根拠に基づいて、患者さんだけではなく周囲のスタッフ、自分自身も納得して医療を「施術」するんです。それをするためには、勉強を怠ってはいけません。

先ほど「第一印象が重要」とおっしゃいましたが、患者さんと相対する際に身に着ける白衣については、何かこだわりはありますか?

白衣というのは、祭りの法被(はっぴ)のようなものだと思っているんです。

お産は「お祭り」ということですか?

はい、これは決して不謹慎な話ではなく、お産は人生におけるハレの日。そこにプロとして寄り添うためには、こちら側にもハレの衣装、そして心の構えも必要です。

物理的な準備だけでなく、精神的な準備のためにも白衣が必要、ということでしょうか。

白衣に着替えることによって、気持ちの切り替えができますよね。難しい出産が待っている時は、「よし、これを着るぞ」と白衣を勝負服に見立てることもあります。自分の中でのおまじないのようなものです。

荻田先生が白衣を選ぶポイントはどこですか?

白衣は医者のアイコンです。ぶっ飛びすぎず、とはいえ多少の自己主張があり、着ていて疲れない、でしょうか。クラシコの白衣はユニークでありながら体にしっかりとフィットするので、気に入っています。

あとは、一日中外来で着用することもあるので、ヘタらないのも大事ですね。縫製がしっかりしているクラシコの白衣は着崩れしにくく、第一印象をキープするのにも役立っています。

荻田 和秀医師 Kazuhide Ogita

香川医科大学医学科卒業。大阪大学医学部附属病院、大阪警察病院、大阪府立母子保健総合医療センターを経て大阪大学大学院医学系研究科卒。卒後大阪大学医学部附属病院分娩育児部病棟医長勤務の後、2008年にりんくう総合医療センター産婦人科部長に就任。産婦人科医師減少のため近隣の公的病院を集約化した「泉州広域母子医療センター」のセンター長・周産期センター長を兼務する。

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